アパートの前にある貸し庭(クラインガーテン)のグループ責任者から、「庭に空きが出るから見に来ないか」という連絡がありました。
ここのところ週末は、ハレ郊外のママの庭で過ごしていた私たち。
庭や近所の国立公園から果実たくさん収穫して来ました。
自然の恵み、良いですねー。
果物が庭にあるのって、とても嬉しいものです。
自分たちにも果樹のなる庭が欲しいなと思いました。
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ママの庭とその近所にある国立公園から収穫してきた果実。 |
どんな庭が借りれるのかと楽しみにして約束の日、見学そして現借主との面談を迎えました。
現在の借主は市内に住む老夫婦。
30年くらい前から借りているそうで、とてもきれいにしている庭でした。
なんでも昨年旦那さんが庭仕事中に転倒し足に怪我をしたそうで、もうこれ以上は庭仕事は無理だと、解約することにしたそうです。
しかし長年大事にして来た庭、簡単に手放したくないのは当たり前ですよね。
「良い人に借りてもらいたい」と責任者に声をかけたようです。
そこで我家に声がかかりました。
責任者の人が覚えていてくれたんですねー、どうもありがとう!
どうやら私たち家族、けっこう良い人に見えるようです。
もちろん悪いことなんてしないし、人相だってそんなにひどくありません。
誰が見ても無害そうだと思うので、当然そのように見えてもらわないと困りますけど。
私たちの家族4人と、ハレから来ていた庭の大先輩、ガーテン歴半世紀くらいのママも一緒に庭見学に出かけました。
紹介された庭は広さはそれほどありませんが、とても大事に管理されている庭というのが一目見てわかりました。
きちんと刈られた芝、雑草がはえていない花壇、果樹も地面に落ちた実がぐちゃぐちゃになっているなんてこともありません。
小さな小屋もきちんと片付けられていました。
オーナーも「全部乾いてる」という言い方をしていました。
つまりは湿気ってない、雨漏りとかしていないってことでしょうね。
妻はすぐに決めたようです。
「私たちのことを待っていたように感じた」とまで言ってます。
庭を見る目はけっこう厳しいママも「これはあななたたちにとって完璧な物件」と。
私は果実の樹が杏だと聞いて完全にやられました。
子供の頃から杏飴とか干し杏とか、駄菓子屋で売っていた杏のお菓子が大好きだった私にとって、杏の樹はまさに憧れ。
ジャムでも杏ジャムが一番好きです。
そして杏以外にもサワーチェリーの樹が2本ありました。
いやー、素晴らしい。
私にとっては最高の果樹ですね。
妻ほど庭熱がない私でも、是非借りたいと思いました。
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ママの庭産ブルーベリーソース、作り中 |
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左からプルーン、ミラベレ(赤)、杏、ブラックベリー、ミラベレ(黄)、ブルーベリーのソース
いただいた杏で作りました |
相手の老夫婦も私たちのことをすぐに気に入ってくれたようで、しばらくお互いの紹介や世間話をした後、私たちが譲ってもらえることになりました。
その日に聞いた金額は 540ユーロ。
後日、庭に査定屋さんが来るそうで、しっかりした金額を調べてもらい再び連絡するとのことでした。
こういった査定屋もあるのかとちょっとびっくり。
確かに何もない空き地を使い勝手の良い自分の庭にするのは、大変な労力と時間、お金がかかります。
譲る時は出来れば少しでも良い値段をもらいたいですよね。
そこで庭の査定屋に来てもらい、きっちり数字を出してもらう。
ほとんどの場合が希望金額より低くなるらしいです。
実際、前に紹介された物件はもうちょっと広かったのですが、長いこと手入れされていなかったようで荒れ放題、建ってる小屋はあちこち腐っててボロボロ、更に植えてある樹も3本ほど他の植物に有害な菌を保有するらしく切らなくてはならないなど、借りた後たくさんやらなくてはならない事があるにもかかわらず、借主が400ユーロ希望ということでした。
もちろんキャンセル。
結局、庭の酷さを見たグループ責任者が査定屋を頼むまでもなく、この状態なら 100ユーロがいいところだろうと借主を説得、値下げしたらしいです。
後日若いカップルが借りることになったと聞きました。
そして先日、妻が本契約に出かけて来ました。
査定屋さんの結果も、希望価格と変わらなかったようで 540ユーロ。
入会費、年会費なども含まれているようです。
その他個人的に使用した水道、電気代は別料金。
それと会のために年間6時間の共同作業をする必要があるそうです。
共用する通路などの清掃、植木の枝卸など、そういえば時々多くの人が集まって何やら働いていました。
そういったイベントに参加できず、時間が足りないときはお金を払う必要があるんだそうです。
上手くできていますね。
契約時、庭の会則などの説明の後、理事たちにも承認してもらう必要もあったようです。
その時に「ところで旦那さんはどこの国の人なのか?」と聞かれたんですって。
日本人と答えると、みんなの顔が急に明るくなり興味津々だったと言ってました。
「日本ではバーベキューとかやるのか?その時どんな物食べてるんだ?」
「今度是非うちの庭にも寄ってくれ」
など、いろいろ聞かれたそうです。
どこか違う国を想像していて、少々心配になっていた様子だったとも。
ありがたいことに、日本はこちらの人達にとても良い印象があるようですね。
「多くのドイツ人が日本のことを良く知らないけれど、すごく親しみを持っているんだよね」と妻は言ってます。
いろいろなところで(というよりは日本だけで)、どちらも敗戦国同士で経済大国、良い自動車を造るなど、似たようなところが多くあるからお互いに気が合うんだとか聞きますが、最近私が思うのは、
「日本人のまじめな気質」が何より気に入られている、というところじゃないでしょうか。
外国で悪い事する人がすごく少ない(民間のレベルで)、お行儀が良い(世界レベルで)など、けっこうみんな知ってるんですよね。
ドイツは欧米諸国の人達から、まじめ、固いとか言われている国です。
冷たいと悪口も言われるほどです。
規則を守って控えめな日本人は、好かれこすれ、嫌われることはないでしょう。
そして独自の文化がしっかりある。
寿司、着物、侍などの伝統的な物から、漫画、ゲームなどの分野(クール・ジャパンと言われるところ)でも、オリジナル性の高いものがたくさんあります。
更にその品質が驚くほど高い。
着物や漆器など工芸品の美しさはもちろん、ちょっとしたキャラクターの可愛らしさや、漫画やアニメの完成度の高さは、すでに別次元だと思います。
子供の終業式の後、ちょっとしたパーティーで浴衣を着せたところ、自分も着たいと言った子供たちの列ができました。
親も子供も大喜びでした。
「きれい」、「素敵」の連発。
姪っ子のお下がりで、大した浴衣じゃないにも関わらずです。
妻が会社の同僚達と軽いハイキングに出かけた時の事。
洪水後で蚊が多かったんだそうです。
そこで、持っていた小さいバッグから取り出したキティちゃん柄の携帯用ムヒSに、全ての同僚(女性)が感動、みんながつけたがり、
「今度日本に行く時はこういうのおみやげにたくさん買って来て!」と言われたそうです。
小さくて細かく気が利いてる、それでいて可愛かったりする物を作る事でも一歩リードしていますね。
書類にサインをしてお金を支払い、来月の4日に鍵をもらうこととなりました。
契約が無事に完了です。
その時、同じく契約解除で来ていた現借主の老婦人に、
「金額の事だけど、後からいくらかもらったお金を返す」という事を言われたそうです。
何でも「あなた達みたいに良い人達からあんなにいっぱいもらえない」とのこと。
もちろんありがたく辞退したそうですが、すごく親しみを持って接してくれる人達が多いです。
妻が言うには、モロに東ドイツ人的ということでした。
私には時代小説に出てくる長屋の付き合いか、みたいな想像しか出来ませんが、私のようなよそから来た者にはありがたいことです。
そして契約完了祝いとして、庭の敷地内にあるクナイプでゼクト(ドイツのスパークリング・ワイン)をご馳走になったみたい。
その際、隣近所のメンバーの人柄をいろいろ教えてもらったんですって。
妻にとってもちょっと驚きなくらい話し込んだと言ってました。
ということで、来月からは庭も借りることになりました。
妻は芝生の部分を畑にして野菜を育てる計画を立てています。
私はまず、バルコニーに置いてある睡蓮の移動ですね。
サワーチェリーの枝卸も近々する必要があるそうです。
生活の一部に庭の手入れも入ることになりました。
豊かさが増すように活用できれば良いですね。