工房はマグデブルグ近郊の村にあるため、職人さんがわざわざ迎えにきてくれました。
預けた時には9月中には出来上がるなんて話だったのですが、もう11月の半ば過ぎですね。
なんでも夏に体調を崩して、一月近く仕事にならなかったんですって。
我が家はまったく気にしてなかったのですけれど。
遅くなってゴメンねと謝ってくれました。
職人さんの家は祖父の代からピアノ修理の職人家族で、彼女が3代目。
数年前に同じくスタインウェイの職人をしていた旦那様を亡くし、現在は一人でやっているそうで、大きな物を動かす時なんかにちょっと寂しくなっちゃうんですって。
なんか全体的に奇麗になってます |
ピアノという楽器と弾く以外で深く関わっている人なんですね。
我が家のブリュートナーも、彼女にとってはいろいろ大変なところがあったようで、そのぶん思い入れもかなり強いみたいなんですね。
ものすごく気に入ってもらったようです。
車で工房に向かう道中、
「もし良かったら私の持っているブリュートナーと取り替えないか?」
みたいなことを言われたんですね。
どんだけ気に入ってるんだよって話ですが、我が家のブリュートナーってそんなに魅力的だったっけ?
何といっても1887年製なので古いことは古いですね。
おそらく創業者のユリウスさんが現役で作ってた頃のものでしょうね。
JULIUS BLÜTNER, LEIPZIG 1865年から1881年までにもらった賞が記されていますね。 |
工房はさすが古そうなピアノがたくさん置いてありました。
でもほとんどが修理途中というか、彼女の可愛いコレクションのようです。
古いピアノのコレクター?
自分で直せるんだから、ゆっくり楽しめますよね。
ピアノ線を叩くフエルト部分は新しく交換 |
金属部分も磨いてくれたようです。 ピカピカ。大変だったろうに、、、 |
我が家のピアノは過去に水害の被害にあったんじゃないかと言ってました。
詳しい話はちょっと判らないのですが、土台の木に痛んでいる部分があるため、なかなかしっかり固定できず途中で何度も諦めそうになったんですって。
結果的に上手くできたそうなのですが、その部分がいずれまた緩んでくる心配があるんだそうです。
もしそうなっておかしいなと思ったら、無料で前述した彼女のブリュートナーといつでも取り替えてくれるんですって。
中の仕組み部分だけ見てるとそんなに古い感じもしませんね。 |
そこまで言われるなら、もうすぐに取り替えちゃっても良いんじゃないとか私としては思っちゃうんですけど、何故か子供たちは「え〜っ」と、そのありがたい提案に否定的でした。
そんなに気に入ってたんだ、あのブリュートナー、、、
一番右のピアノが彼女のブリュートナー。 手前の小さなグランドピアノはスタインウェイでした。 |
職人さんのモデルは1915年製だそうで、うちのと比べると多少新しいですね。
それでも100年前のピアノです。
楽器としての程度でいうとこちらの方が全然良いそうなので、やっぱり職人さんマニアだね。
ピアノの見た目も、色で言えば妻の部屋の雰囲気によりマッチすると思いましたけど。
前板にもアールヌーボーな装飾とか彫られてたし、自分としてはこっちの方が好きかなー、、、
職人さんの話を聞いていて、昔お世話になっていた車の修理工場の社長を思い出しました。
自分で直せちゃうもんだから、車が壊れるってことが特に問題とは思ってないみたいなんですよね。
話をしているとどうも壊れやすい車ばっかり好きみたいでしたし。
馬鹿な子程可愛い的な何かがあるんでしょうかね?
かなり古そうなスタインウェイ、装飾が可愛らしいです。 もうどうにもならないみたいですけど、、、 |
きっと我が家のブリュートナーも彼女にとっては、「いつ壊れるか解らない危なっかしくて、側に置いておかなきゃいけない子」って感じなのかもしれません。
壊れたらいつでも取り替えてあげるよなんて、ピアノの話をしているんじゃないみたいですけど、、、
無造作に置いてありますね、、、 |
そういうわけで、我が家のピアノ、どうやら完成したみたい。
試しに子供たちと妻が弾いたのですが、しっかりしたピアノの音でした。
まったく上手く言えませんけど、修理に出す前はギャンギャンした軽い感じの音だったと思います。
そして近々帰って来る予定。
家だとどんな音に聴こえるんでしょうか?
楽しみになってきました。